貴族探偵対女探偵のあらすじ!2017年春の月9ドラマ原作小説!

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  • この記事を書いた人:Ryota

1987年からスタートし、2017年春で30周年を迎えるフジテレビの月9ドラマ。

そんな節目となる月9を彩るのは、嵐の相葉雅紀さんが主演を務める『貴族探偵』です!

こちらの記事では原作小説(麻耶雄嵩/まやゆたか・著)『貴族探偵対女探偵』のあらすじ(全5話)をすべてご紹介します!

なお、ドラマ『貴族探偵』のネタバレと感想については以下の記事を随時更新していますので、是非ご覧ください。

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『貴族探偵対女探偵』原作小説 第1話「白きを見れば」あらすじ

登場人物

<女探偵>

高徳 愛香(たかとく あいか)
紗知の大学時代の親友。大学を辞めて名探偵と名高い師匠の下へ弟子入りした。若くして亡くなった師匠の意思を受け継ぎ、探偵として全国を飛び回っている。

<被害者>

笹部 恭介(ささべ きょうすけ)
紗知の一つ下の学年の院生。この事件の被害者。

<容疑者>

平野 紗知(ひらの さち)
大学院生。愛香の大学時代からの親友で、探偵の道に進んだ彼女の一番の理解者。気さくで社交的な性格の持ち主。

多田 朱美(ただ あけみ)
大学4年生。狐目の若い女。気が強く、誰彼構わず突っかかってくる性格。

妙見 千明(みょうけん ちあき)
大学3年生。銀縁眼鏡をかけた古風な顔立ちの女。線が細く気が弱い。

畦野 智一郎(うねの ともいちろう)
修士の院生。角刈りのスポーツマン風の男。

亀井(かめい)
立派な口髭を蓄えた男。千明の恋人で昨日来たばかり。大学とは関係がなく、苗字以外は謎に包まれている。

ガスコン荘

一面が白銀の世界に覆われた山の中に佇む「ガスコン荘」。一人の女性がこの古びた山荘に到着しました。

彼女の名は高徳愛香。若くして探偵への道を志した女性です。彼女の師匠は名探偵として高い評価を得ていた人でしたが、癌のため45歳という若さでこの世を去りました。

その後、彼の意思を受け継いで懸命に働いた結果、探偵として多少は名の知られる存在にまで成長した愛香は、親友の紗知に誘われてこの山荘へとやってきたのです。

あまりにも忙しく飛び回っている愛香の姿を見かねた紗知が、彼女の体調を慮って骨休みにと薦めてくれたのでした。

外で出迎えてくれた紗知と再会を喜びあう愛香。ガスコン荘には、紗知が所属している大学のゼミの後輩たちが一昨日からすでに来ているようでしたが、みんな好き勝手やっているから気にしないでと紗知。

鬼隠しの井戸

愛香がここを訪れたのは、紗知に会えること以外にもう一つ理由がありました。

それは、この山荘に古くから伝わる伝説“鬼隠しの井戸”でした。この古井戸は、死体を中に投げ込んでも浮かんでこないため、証拠隠滅に使われていたという伝説が残っていたのです。

そしてこの場所に山荘を建てたイギリス人貿易商は、古井戸を潰さずに地下室にしたのだそう。それからというもの夜な夜な地下から奇妙な声が聞こえてくるようになり…という嘘か真か分からない都市伝説のようなものも残っているのだとか。

紗知の父親が興味本位で購入したこの曰くつきの別荘でしたが、紗知自身はさほど興味がないようでした。

寒いから早く中に入りましょうと紗知が促した時、愛香は彼女のコートの右袖のボタンが取れて失くなっていることに気付きます。どこで失くしたんだろと愚痴る紗知。

事件発生

「みんなまだ寝ているから先に井戸を見てみる?」という紗知の誘いに乗って、地下へ続く扉を開けた二人。

その場所はなぜか電気がつけっ放しでした。誰かが消し忘れたのかなと紗知はそう気にするでもない様子。

地下は湿っぽいからと愛香にスリッパを履かせ、いざ階段を下りていきます。一番下の通路まで下りきったところで愛香があることに気付きました。

そこにあったのは赤黒い血痕と、その上をスリッパで歩いたような痕でした。これは前からあったのかと紗知に尋ねると、初めて見たと答える紗知。

おもむろに手袋をはめる愛香。ゆっくりと地下室の扉を開けていきます。階段と同じように明かりが付いていた室内に横たわっていたのは、若い男の死体でした。

「どうして笹部君が?!」とパニックに陥りかけた紗知を落ち着かせ、愛香が調査のため地下室内へと入ります。

調査開始

死体は、室内の中央に位置する古井戸の近くにうつぶせの状態で倒れていました。

床には、頭部からの流血によるものか、血だまりが出来ており、そこにスリッパで踏みつけたような痕が残っているという状況。壁面に血しぶきが数滴飛んでいたのは、おそらくその血だまりを踏んでしまった時に生じたものだと思われました。

黒いジャージ姿で、足にはスリッパ、そしてなぜか手袋をはめていた死体。身許について紗知に尋ねると、ここに滞在していた笹部恭介という大学院生で間違いないとのこと。

彼女に他の学生たちを呼ぶよう指示し、自らは警察へと通報しました。

死体を子細に検分すると、どうやら額と後頭部を棒状のもので撲殺されたよう。死亡推定時刻は大体夜中の3時から4時。

室内を見渡すと、凶器と思しき(血痕の付着した)鉄パイプが落ちていることに気付いた愛香。試しに振ってみると、天井の梁の部分にぶつかってしまうことに気付きます。良く見てみるとその梁に凹んだ痕が確認できました。

その時でした!愛香に向けて「あんたがやったの」と甲高い声が飛び込んできます。振り向くと、地下室の外で怯えている狐目の性格のきつそうな女と、銀縁眼鏡の女がこちらを覗いていました。

続いて男が二人(角刈りの男と口髭の男)登場し、紗知を含む山荘に滞在していた5人の客人が揃いました。

実は探偵なのだと身分を明かし、皆を落ち着かせる愛香。紗知もフォローし、狐目の女も少しトーンダウンしたよう。

しかし、それでもまだあまりにも都合よく現れた探偵に疑いの眼差しを向ける狐目の女。警察にもすでに通報済だし、死亡推定時刻からして私には犯行は不可能であると述べていた愛香の下に警察から折り返し連絡が入ります。

なんと、この山荘に至る唯一の道で事故が発生し、通行止め状態になってしまったためにすぐには辿り着けないのだとか。パニックに陥る学生たちをなだめながらも、愛香は調査を続けます。

コートのボタン

古井戸の蓋は普段は閉まっているという情報を紗知から得た愛香。しかし、今は開いている…。不思議に思って中を覗き込むと、何か丸いものが浮かんでいるのが見えました。

ピンときた愛香。紗知のコートのボタンです。

愛香の動揺を察したのか、狐目の女がどうかしたのかと井戸を覗き込みます。すぐに紗知のものだと気付き、彼女を問い詰める狐目の女。

愛香がすかさずフォローします。これは犯人が故意に落としたものだと。

すると狐目の女は、友達だからって庇っているのかと反論しました。しかし愛香には確固とした理由があったのです。

それは、おそらく鉄パイプを振り回した時に出来たであろう梁についた凹みでした。それは愛香の身長でやっと届く高さにあり、紗知には到底届かない高さだったのです(紗知は愛香より10cm低い)。

では一体誰が、何の目的で紗知を罠に陥れようとしたのでしょうか?

『貴族探偵対女探偵』原作小説 第1話「白きを見れば」のネタバレと感想はこちら

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『貴族探偵対女探偵』原作小説 第2話「色に出でにけり」あらすじ

登場人物

<依子の恋人>

中妻 尚樹(なかつま なおき)
依子の恋人の一人。依子を“女王様”として賛美している。実家は裕福だが上場企業の支店長クラスという程度。自身は肩書のない平社員。

稲戸井 遼一(いなとい りょういち)
依子の恋人の一人。依子とは1年以上交際している。都内の大学で講師を務めており、学究肌で神経質な性格の持ち主。依子を“女神様”と崇めている。

三人目の男
依子の恋人の一人。長身で口髭を生やした20代後半の男。高級スーツを身に纏い、いかにも育ちが良さそうなボンボンといった印象の持ち主。

<玉村家の人々>

玉村 依子(たまむら よりこ)
玉村家の長女。女王様然とした気位の高さの高さを感じさせる美貌の持ち主。何人も男を侍らせている。

玉村 豊(たまむら ゆたか)
依子の兄。依子とは違って常識的な人間。

玉村 規明(たまむら のりあき)
依子の父で玉村家現当主。旧華族の家柄で、大手製薬会社の筆頭株主兼会長。

玉村 示津子(たまむら しづこ)
依子の継母。骨折したのか右腕を三角巾で固定している。色白で華奢な体つきの持ち主。

玉村 礼人(たまむら のりひと)
昨年産まれたばかりの依子の弟。

寺原 真由(てらはら まゆ)
礼人のベビーシッターで、中津の元恋人。看護師の資格を持っている。

奇妙な関係

中妻尚樹は、安房の人里離れた海沿いの別荘へと到着したところでした。交際相手の玉村依子から3日前に言いつけられ、この地を訪れたのです。

彼女に対し“女王様”と心の中で賛美を示していた中妻。このカップルは決して対等な立場ではなさそうでした。賛美する者とされる者のという明確な境界線が引かれており、依子もそれを意識して中妻に接しているのです。

2人の出会いは、今から10ヶ月前の知り合いの結婚式までさかのぼります。依子の飛び抜けた美貌に思わず見惚れていた中妻。何度か目が合うと、フンと鼻で笑われたので脈はないと思っていたのですが、依子の方から中妻に声を掛けてきました。

ずっと私のことを見てたでしょと強気な依子にダメ元で中妻が交際を申し出た所、意外にも返事はOK。しかし、一つ条件がありました。

それは、「私には既に彼氏がいるけれど、それでもいいなら」ということでした。

一瞬あっけにとられた中妻でしたが、相手が依子だったらそれでも良いと思い、彼が当時付き合っていた彼女と即座に別れ、2人の奇妙な交際がスタートしたのです。

依子のもう一人の交際相手は稲戸井遼一という大学講師。稲戸井と中妻は依子を交えて何度か会っているのだとか。彼女が敢えてそうしているのか、単に無神経なだけなのかは中妻にも判別がつかない所だったようです。

もう一人の恋人

別荘にて依子の出迎えを受けた中妻。彼は本当に自分なんかを家族に紹介してもいいのかと不安げな様子でした。どうやら彼女の父と兄、それと継母(実の母は他界)、さらには稲戸井も来るのだそう。

それに対し依子は、自分に彼氏が複数いることは家族も知っているし、恋人を家族に紹介するのは普通のことだと開き直っている様子でした。

おどおどしながらも豪奢な邸内へと入っていくと、リビングのソファに30前後の男が腰かけていました。

その男は依子の兄の豊でした。よく来てくれたと歓迎してくれ、堅苦しくする必要はないと優しい言葉を掛けてくれました。

玄関のベルが鳴ったので出迎えに行く依子。しばらく豊と話をしていると、そこへ依子に連れられて稲戸井がやってきます。

稲戸井が自己紹介した後、彼らの他にもう一人彼氏が来るんだろと依子に問いかける豊。

驚いた中妻が思わず「もう一人?」と聞き返すと、あなたにはまだ話してなかったわねと依子。稲戸井の方をチラッと見ると、彼は知っていたようでした。

依子の思惑

その後、依子と豊が席を外しとことで中妻と稲戸井が二人きりになり、気まずい思いを味わってっていました。互いに面識はあるものの、いつもは依子が間にいたためにこうして対面するのは初めてだったのです。

そんな空気の中、稲戸井が「やっぱり君も断れなかったようだね」といつものように上から目線で切り出します。

年上ということもあり、いつも先輩風を吹かせていた彼の態度に中妻は辟易することが度々ありました。依子のことを独占したいという欲は両者に共通する所でしたが、中妻がその気持ちを表に出さないよう努めていたのに対し、稲戸井はどうしても中妻のことが邪魔なようでした。

三人目のことを知りたいのだろと稲戸井は続けます。なんでも、彼女が電話している所にたまたま遭遇した稲戸井が尋ねたら、悪びれもせずあっさり教えてくれたそう。

依子はその三人目の男にかなりご執心なようで、稲戸井は中妻なんかよりはるかに脅威を感じているようでした。

稲戸井は今日自分たちが呼ばれたことには何か思惑があると睨んでおり、おそらく結婚相手を発表するんじゃなかろうかと思っていました。そしてその相手こそ三人目の男だというのです。

あまり深く考えていなかった中妻はその考えに驚いたのか、思わず依子と結婚したいと口をついて出してしまいました。それを聞いた稲戸井は彼を睨みつけながら、そう思っているのは君だけじゃないと吐き捨てるように言いました。

意外な再会

玄関のベルが鳴り、どうやら玉村家当主の規明と後妻の示津子が到着したようでした。中妻と稲戸井は挨拶にと玄関へ向かいます。

玄関には規明と示津子だけでなく、赤ん坊を抱えた若い女性も一緒でした。規明の後妻である示津子は骨折をしているのか、ギプスで固定された右腕を三角巾で吊った状態。

依子の紹介で、この赤ん坊が彼女の腹違いの弟である礼人で、抱えているのはベビーシッターの寺原真由という女性であることが分かりました。

しかし中妻はこのベビーシッターの女性が誰であるのかすでに知っていました。なんと真由は彼の元彼女だったのです。向こうも気付いたようで、互いに視線を逸らす2人。

規明が客人にはもうお部屋をご案内したのかと依子に問いかけると、これからよといって二人の手を取り2階へと上がっていきました。

中妻と真由

2階の客室は一人で使うにはもったないくらいの広さで、設備も整っており、まさに至れり尽せりといった感じでした。

中妻がソファに腰かけながら依子の家族のことや、3人目の男のこと、はたまた偶然とは思えない真由との出会いなどを思案していると、扉をノックする音が室内に響き渡ります。

来訪者は真由でした。彼女がどうしてあなたがここにいるのと切り出すと、こっちが聞きたいくらいだと中妻。

彼女が玉村家に勤めたのは友達からの紹介で、腰を悪くして引退した乳母の跡を引き継いだのだとか。

よりによって依子がどうして中妻なんかと付き合っているのかは私には関係ないけど、あなたの進んでいるのは茨の道ねと真由。

中妻と違ってインテリの稲戸井に加えて、あとの一人はなんでも玉村家よりをはるかに上回る家柄なんだとか。

そんな話をしていると、部屋の入り口に依子が立っていることに気付きます。随分仲がいいわねと声を掛けてきた依子は、特に怒っているという表情でもありませんでした。

ちょっとした顔見知りだったのでと真由が謝罪すると、私は縛られたくないし誰も縛るつもりはないから気にしなくていいと依子。

それは中妻にとって非常にショックな言葉でした。彼女の人となりを分かってはいたものの、少しは独占欲を示してほしかったのです。

占い

その後中妻と依子がリビングに戻ると、稲戸井が何やら豊に占いの話をしていました。なんでも、生年月日と姓名判断を組み合わせた独自の占いで、最近凝っているのだとか。

どうやら豊のことを占ってあげようと申し出ているようでしたが、当の豊はそういった類のものは信じていないとにべもなく断っていたところのよう。

するといつの間にか規明と示津子が入ってきて稲戸井に「せっかくだから占ってもらえばいいじゃないか」と助け船を出しました。

それならお父さんが占ってもらえば良いとの豊の言葉に応じ、稲戸井の占いが始まりました。

緊張しながらに規明の生年月日やらを聞き取り、自前の手帳に書き込んでいく稲戸井。それによると、規明の運勢は非常に良いもののようで、それを聞いた規明も満更でもない様子でした。

次に規明に促され示津子の運勢も占うことになった稲戸井。結果は、若干健康面に不安はあるが概ね良いものだということで、すっかり喜んでいる様子の規明。

稲戸井にとっても恋人の両親に気に入られたと思い、気を良くしていた所でしたが、最後に赤ん坊の礼人を占った時に問題が生じました。

手帳に生年月日と名前を書いた瞬間、明らかに稲戸井の表情が渋いものに変化したのです。そんなに悪いのかと規明も心配そう。

稲戸井は手帳をパタッと閉じ、それほど悪くないですよと歯切れ悪く答え、それ以上は何も話そうとしません。依子に詰め寄られても頑なに拒む稲戸井。

果ては気分が悪くなったので、逃げるように2階へと上がっていってしまったのです。悪いことを言わないようにと気を遣ってくれたんだと規明が取りなすも、依子の怒りは収まりませんでした。

料理人

そんな不穏な空気を破るかのようにドアベルの音が鳴り響きます。怒りを隠せないまま玄関へと向かった依子。

どうやら三人目の男ではなく、今日のために依子が呼び寄せた料理人のようでした。何やら揉めているような声がしたのは、昔気質の人で使用人は勝手口から出ないと入れないと強情だったんだとか。

勝手口を開けに行って戻ってきた依子に、怪我さえしてなければ私がやるのにと謝罪する示津子。そんな彼女に対し依子は、気にする必要はないし、すごく腕が良いらしいからと示津子を気遣う姿勢を見せました。

そこで豊が三人目の男はいつくるのか尋ねると、彼なら夕食後になるみたいと依子。遅れていることを謝罪する電話が先程あったようでした。

三人目の男

依子が言っていた通り料理人の腕は確かで、高級料亭顔負けの料理がずらりと食卓に並び、一人で自室へと戻った稲戸井も夕食には顔を見せ、いくらか気分も落ち着いた様子でした。

そして時刻は8時前、とうとう三人目の男が現れます。高級スーツを身に纏った口髭の男の背後には大柄な男がカバンを抱えて控えていました。

その大柄な男(佐藤)にもう帰って良いと促す口髭の男。どうやら彼の運転手のようで、一緒に泊まっていけば良いという依子に、恋人の家に使用人を泊まらせるようなことはしないと誘いを断ります。

夜8時半頃、口髭の男の登場がこの場を掻き乱しました。依子の部屋にいた4人(依子・中妻・稲戸井・口髭の男)でしたが、到着以来ずっと依子を独占していた口髭の男に稲戸井がついに怒りを爆発させたのです。

君だけのものではないと語気を荒げる稲戸井に対し、「私は依子の美しさに惹かれて舞い込んだ蛾みたいなものだ」と理解出来そうで出来ないと喩えを持ち出してきた口髭の男。

最終的にはいい気になるなと捨て台詞を吐いて、稲戸井は自室へと引き上げていきました。

その後、依子と中妻と口髭の男がリビングに赴くと、そこには規明と豊がいました。規明は礼人のぐずりが始まったとのことで、邪魔者扱いされてここに逃げて来たのだとか。

すると出掛けなくなくてはならないからと豊が席を立ち、父の相手をバトンタッチしてくれと皆に持ち掛けます。なんでも、地元の知人と遊ぶ約束を前々からしていたようで、準備をするため2階へと上がっていきました。

ちょうどそれと入れ違うように真由がリビングに降りてきて、礼人様がお休みなられたので厨房の片づけをしてまいりますと依子に告げました。

それが済んだらあなたもここに来なさいと依子。バカンスなんだから働きづめは良くないとのことで、その言葉に同意した真由は厨房へと消えていきました。

事件発生

夜9時半前。胃にむかつきを覚えた中妻はリビングを離れ、一旦自室へと戻りました。どうやら飲み過ぎてしまったよう。

仕方なく洗面室で胃の中のものを全て吐いた後、夜風に当たって酔いを醒ましてから再びリビングへと戻りました。

10時。突然2階から示津子の悲鳴が聞こえ、事態は急変します。即座に反応した規明と依子が2階へ駆けあがり、後を追うように中妻も向かいました。

廊下ではなぜか携帯のアラーム音が響き渡っており、開いていた稲戸井の部屋へと駆けこんだ一行は、床にへたり込んで洗面室を指さしている示津子を発見します。

そこにいたのは変わり果てた姿の稲戸井でした。ドアノブにタオルを引っ掛かけて首を吊ったよう。

絨毯の上にはグラスと溶けかけた氷、そしてこぼれたアルコールが茶色い染みを形どっていました。

果たして稲戸井は本当に自殺したのでしょうか?!もしそうでないとしら一体…?!

『貴族探偵対女探偵』原作小説 第2話「色に出でにけり」のネタバレと感想はこちら

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『貴族探偵対女探偵』原作小説 第3話「むべ山風を」あらすじ

登場人物

<被害者>

大場 和典(だいば かずのり)
この事件の被害者。25歳で、博士課程1年目の院生。田町研の学生の中では唯一の博士課程で最年長。

<田町研関係者>

韮山 瞳(にらやま ひとみ)
30過ぎの美人准教授。テレビやエッセイなどの露出も多い。田町教授定年後の時期教授候補。専門は菌類の研究。

仁田(にった)
一昨年就任したばかりの田町研の助手。綿菓子のようにモフモフした丸顔が特徴。

原木 一昭(ばらき かずあき)
修士2年目の院生。関西弁で気の強そうな顔立ちが特徴的な男。

長岡 卓也(ながおか たくや)
修士2年目の院生。瘦せぎすでボソボソとしゃべる陰気な学者タイプ。

修善寺 潤子(しゅぜんじ じゅんこ)
修士1年目の院生。事件の第一発見者。フレームのない眼鏡を掛けた細面の女性。

田京 恵(たきょう めぐみ)
大学4年生。テレビで見た韮山に憧れて田町研に入った。服装や顔立ちも韮山の真似をしている。

三島 純夫(みしま すみお)
大学4年生。一見中学生にしか見えないような小柄な体格で色白・童顔の男。田町研の若きホープ。

大仁 智史(おおひと さとし)
大学3年生。就職組だったが、キノコの魅力にはまって進学組に変更になった。爽やかな男前な顔立ちの持ち主。

牧之郷 明(まきのごう あきら)
大学3年生。小太りであがり性。進学予定があがり性のため教官にむいていないと就職組に変更になった。

貴族探偵と女探偵

ティーカップを傾けながら対面していた愛香と貴族探偵(傍らにはメイドの田中)。ここはとある都内の大学の准教授の教官室で、部屋の主は席を外していました。

この状況に戸惑っていた愛香は、どうして私を誘ったのかと貴族探偵に問いかけます。それに対し、ただの気まぐれだと答える貴族探偵。

愛香はこの大学からある事件を依頼されたためにここを訪れていました。教授会の内部データが盗まれたという件でしたが、1時間程前に全て解決して満足感に浸りながらキャンパス内を歩いていた所を呼び止められたのです。

そもそも何故あなたがここにいるのという愛香の問いには、それはこっちのセリフだと貴族探偵は答えます。ガールフレンドに会いに来たら君がいたのだというのです。

そのガールフレンドというのがこの部屋の主である韮山瞳准教授。なんでも黄色く発光するキノコの栽培に成功したとかで、それを見るために貴族探偵はこの場所を訪れていたのだとか。

しかし、いざそのキノコを披露しようという段になって韮山が教授に呼び出され、今こうして待ちぼうけを喰らっているということなのです。

その後、これまでの経緯から言い争いに発展した2人でしたが、メイドの田中がその場を諫め、貴族探偵はここは騒がしいと言って散歩に出かけました。

事件発生

メイドの田中と二人っきりになった愛香。入れてくれた紅茶が本当に美味しかったので素直にそう伝えると、本気で喜ぶ様子の田中に何だか好感を持てるなと感じていました。

やがて彼女と色々なことを話している内に、テレビや音楽のことへと話題が移っていきました。

テレビはほとんど見ないという田中でしたが、“G☆MENS”というバンドだけは愛聴しているのだとか。なんとそれは愛香も大好きなパンクバンドでした。思わね一致に驚く2人。

しばらくその話題で盛り上がっていると、「すっかり仲良くなったようだね」と貴族探偵が戻ってきていました。

その傍らには准教授の韮山が控えており、お待たせしてすいませんと皆に謝罪の弁を述べます。早速発光するキノコを見に行こうということになり、せっかくだからということで愛香も同行することにしました。

その時でした!女性の悲鳴が部屋の外で響き渡ったのです!

ティーカップ

真っ先に愛香が駆け付けたのは小さな給湯室でした。左右にドアがあり、それぞれ隣の部屋へ通じているよう。

ドアが開いていたのは右側で、その向こうに一人の女性(悲鳴の主)がへたり込んでいて、「あれ、あれ」と部屋の中央を指さしています。

彼女が指さした方向にあったのは、キャスター付きの椅子に腰かけ、テーブルに突っ伏している男の死体。首には梱包用のロープが巻き付いており、殺人であることは明白でした。

反射的に確認した時間は、3時5分。体温から判断して殺されてから1時間と経っていないと判断した愛香。

「修善寺さん、どうしたの」と追いついた韮山が第一発見者に声を掛けていました。愛香が被害者について尋ねると、研究室の院生の大場だと答えた韮山。

被害者が突っ伏していたテーブルの上(右脇あたり)には、緑の若竹色のラインが入ったソーサーが一枚。他には何も置かれていませんでしたが、ソーサーから伝うようにこぼれ落ちていた水分を辿っていくと、床に割れたカップ(ソーサーと同色の)が落ちていました。

おそらく、首を絞められた被害者が抵抗したことによって生じたことだと見当をつけた愛香。

このティーカップについて韮山に尋ねると、被害者の自前のものではなく共用のものであることが判明します。なんでも色分けされており、若竹色のラインが入ったものは院生用なんだとか。

半年ほど前からこのシステムを導入しており…

若竹色:博士、修士を含めた院生用(男性限定)
レモン色:博士、修士を含めた院生用(女性限定)
水色:男子学生用
ピンク:女子学生用
黒:来客用(男性限定)
薄茶:来客用(女性限定)

となっており、通常は給湯室の棚に置かれているそう。教授陣(韮山含め3名)はそれぞれ自前のものを使っているようでした。 

その後田中が警察へと通報し、到着を待つ間に愛香は一通り現場を調べ始めます。

断水

まず窓の鍵は全て閉まっていた上、この場所が3階ということもあり、外からの侵入は不可能だと踏んだ愛香。また、給湯室側からの他にもう一つあった出入り口も内側からロックされており、愛香たちが入ってきた経路しか侵入することは出来なそうでした。

流しの上には、うっすらと紅茶の残ったティーポットがあり、これで淹れたのは間違いなさそう。すぐ脇のゴミ箱の中身はティーバッグとその包装紙2組のみ。

シンクの中の洗い桶には、水に浸けられたカップが3つ(水色、ピンク、黒)。犯人がそうしたのだろうかと考えていると、突然蛇口から水が噴き出しました!

辺りを見回すと「断水のお知らせ」という張り紙を発見し、そこには本日2時30分~3時20分の間断水する旨が記されていました。愛香が時計を見ると時刻はちょうど3時20分。断水終了の時刻です。

犯人がカップを洗おうと思ったが断水のせいで洗えなかった可能性が浮上し、となると洗い桶の中の3つのティーカップが犯人を示す手掛かりになるのかもと愛香は考えていました。

ゴミの分別

他にも愛香が気付いたことがあり、それはゴミの分別についてでした。本来生ゴミ扱いのティーバッグが捨てられていたのは、プラスチック用のゴミ袋だったのです。

よくよく見てみると、ゴミ袋が上段・下段と二段構成にになっており、下の方には生ゴミがすでに捨てられていました。

韮山に尋ねると、なんでも前は一緒に捨てていたが、10日ほど前から全学で生ゴミとプラスチック類だけは分別するようにというお達しが出たのだとか。

“熊本組”には昨晩話したのだけど、酒席だったから覚えてなかったのかもと韮山。

愛香が“熊本組”について尋ねると、熊本県の人吉にある研究施設に1ヶ月主張していた学生のことをそう呼んでいるのだそう。そしてそのグループが帰ってきたのが昨日のこと。ゴミの分別のことを失念していたとしても無理はなさそうでした。

すると貴族探偵が、つまりシンクの中の3つのティーカップを使うものでなおかつ熊本組のものが犯人という訳だなと意見を述べました。

その言葉が、ちょうど集まり始めていた学生たちの間でパニックとして伝染しかけたその時、警察が到着しました。

事件概要

愛香が警察からの事情聴取を終え、韮山の部屋へと戻ると、「刑事に鼻であしらわれたのか」と貴族探偵。

愛香としては、この事件に関わっていながら切り上げなくてはいけないことに後ろ髪引かれる思いを抱いていました。そんな彼女の気持ちを見抜いた貴族探偵は、私が口利きしてやると言って、田中を刑事の下へと遣わせます。

勝手な真似はしないでと抵抗した愛香でしたが、すぐに田中が戻ってきて捜査に参加することをあっさり了承してもらったようでした。

さきほどは厳しい対応だった刑事にどんなマジックを使ったのか、すっかり平身低頭といった感じで拍子抜けした愛香。早速事件の詳細について聞き出します。

被害者:大場和典
死亡推定時刻:2時00分~2時40分
死因:絞殺(ただし、後頭部を鈍器で昏倒させた後に凶行に及んだ)
凶器:研究室の梱包用の備品(誰でも入手可)
   鈍器については不明
指紋:室内に学生たちのものが多数
   床に落ちていたティーカップの取っ手には大場の指紋のみ
被害者の体内:胃及び口内から紅茶の成分を検出
シンク内のティーカップ:使用の形跡なし

第一発見者の潤子がこの部屋を覗いたのは、被害者が学生部屋に忘れていた携帯電話が鳴り止まず、被害者を探すために潤子と恵という学生で手分けして探していたためだそう。

また、断水が始まってからこのエリアに外部から入ってきたのは貴族探偵ただ一人だったということも判明しており、容疑者の範囲は当時田町研の研究室にいた人間に絞られました。

つまり容疑者は、田町教授と韮山、そして助手の仁田の3名の指導教官。原木、長岡、潤子の院生3名。三島、大仁、牧之郷の男子学生3名と、女子学生の恵の1名。

彼らは皆互いのアリバイをはっきりとは証明できませんでしたが、唯一韮山だけはほぼアリバイが成立していました。

2時過ぎに貴族探偵や愛香を置いて教授の下へと赴き、3時前には戻ってきていたため犯行は不可能。田町教授は、2時10分頃に韮山を迎えたので、ギリギリ犯行を行えなくもないが、可能性は薄そうでした。

では、犯人は仁田以下8名の中にいるということ。一体誰が凶行に及んだのでしょうか?

『貴族探偵対女探偵』原作小説 第3話「むべ山風を」のネタバレと感想はこちら

『貴族探偵対女探偵』原作小説 第4話「幣もとりあへず」あらすじ

登場人物

<いづな様の儀式参加者>

平野 紗知(ひらの さち)
愛香の友人。1年ほど前の“ガスコン荘事件(第1話)”以来、パワースポットなどのオカルト関連のことにハマっている。

赤川 和美(あかがわ かずみ)
サングランスを掛けた20歳過ぎの美人女性。地元新潟県在住。

金谷沢 広成(かなやさわ ひろしげ)
40代半ばくらいの中年の営業マン。地元新潟県の出身。

有戸 秀司(ありと しゅうじ)
30歳前後、茶髪でブランドものの派手なシャツに金の腕時計を身に着けたホスト風の男。新潟市内のショット・バーで働いている。

下北 香苗(しもきた かなえ)
貴族探偵の恋人。新潟市内のOLで、大手商社の役員の娘。

田名部 優紀(たなぶ ゆうき)
20歳過ぎ、パーマ頭の若い男。骨太でがっしりとした体格の持ち主。

いづな

愛香と友人の紗知が訪れた新潟の山間にある温泉旅館“浜梨館”という宿には、座敷童子の伝説が残されていました。

1年近く前の“ガスコン荘”での事件以来、パワースポットといったオカルト現象にハマっていた紗知がネットで調べて見つけたのです。

その古びた宿“浜梨館”に到着すると、早速「いづな様の方ですね」と女将が迎えてくれます。40代半ば、ほっそりした和服が良く似合う女性でした。

すると、入って来た愛香たちを追い出すかのように玄関の外へと誘導した女将。「いづな様は別館におりますので」と笑顔で説明します。どうやら本館とは10分ほど離れた別館へと向かっているようでした。

女将によると浜梨館に伝わる“いづな様”とは、この地で狐を“いづな”と呼ぶことから来ているのだそう。

かつて村人たちが温泉に入っていると、知らない顔が一人加わっているという噂が立ち、狐が客を化かしていると考えられていたのが始まりなんだとか。

それからしばらくすると、いづなを見ると良いことが起きると囁かれ出し、やがて願い事を叶えてくれるという風習へと変遷していったということのようでした。

先客

一行が到着した別館は、昔からある奥館と新たに増築された表館とに分かれており、愛香たちが向かったのは奥館の方でした。

中に入り、広間へと通されるとすでに先客が2名待っていました。一人はカーディガンを羽織った若い女性、もう一人はジャケットを着た長身の中年男性。雰囲気から察するに連れではなさそうでした。

夕食が済むまではこちらでお待ちくださいと女将。どうやらいづな様への紹介が済んでからでないと部屋には入れないのだそう。

説明を終えた女将が去っていくと、若い女の方が愛香たちに話しかけてきます。お互いに自己紹介をし、赤川和美だと名乗ったその女性は20歳くらいの面長の美人。

彼女に「高徳さんは、いづな様には参加されないの?」と訊ねられた愛香。いづな様の儀式の一環として、熨斗袋に名前を書き、願い事を封書してここの床の間に飾るというものがあるらしく、愛香の名前がないことに気付いたとのこと。

紗知の付き添いで訪れただけだった愛香がそう伝えると、せっかく来たのに勿体ないと和美。彼女は地元新潟在住らしいのですが、住んでいるのはこことは離れた新潟市内のようで車で3時間もかかったのだとか。

時間は掛かるし宿はボロいしなど愚痴をこぼす和美。すると、そんな彼女を宥めるかのようにもう一人の中年男性が話に入ってきました。

40代半ばと思われる七三頭の中年男性は、金谷沢広成と名乗りました。ここへ来るのは初めてで、というよりも一度しかダメなんだそう。なんでも、いづな様を二度見た人間はいないらしく、地元の人間でもここぞといった時にしか来ないのだとか。

そんな話をしていると新たな客がやって来ました。30前後の派手な服装の男で、名前は有戸秀司。その場にいた全員が自己紹介をする様子を見ていた愛香は、どうやらこれが慣習のようだと思っていました。

有戸はどうやら新潟市内の古町通というところにあるショット・バーで働いているらしく、営業に来たかのように皆に名刺を配ります。

彼はまるで金谷沢など存在しないかのように、女性三人に向かって話し続けていました。愛香が自慢ばかりの話の内容に嫌気がさしていたのを察したのか、しばらくすると有戸の視線は紗知と和美にだけ向くようになりました。

貴族探偵登場

女将がまた新たに連れて来た客は男女2人組でした。するとその姿を見た愛香が「どうしてあなたが!」と思わず声を上げます。

そう言われた高級スーツを纏った口髭の男・貴族探偵は「また君か」と言わんばかりのうんざりした表情を浮かべていました。

その傍らには、ほっそりとしたブルネットの女性。即座に今の恋人だろうと判断した愛香。下北香苗という名の女性で、ここに来ようというのは彼女の発案のよう。

熨斗袋の残り一つの名前が田名部優紀という名だったので、これがあなたの名前なのかと貴族探偵に訊ねた愛香。

しかし、その名を愛香が口にしたと同時に、何かが彼女のニューロンを刺激しました。記憶の片隅でこの名前に憶えがあったのです。

自分はそんな名前ではないし、そもそも参加すらしていないと貴族探偵が話すと同時に、また新たな客がやって来ました。

20歳過ぎのガッチリした体格のパーマ頭の男で、田名部優紀と名乗りました。その瞬間、背後で緊張が走る気配を感じた愛香。

誰から発せられているのかまでは分からなかったものの、その反応は明らかに好意とは真逆のどす黒い感情でした。

愛香自身もその名前に何らかの反応を示しただけに、心の中でもやもやした感じが蠢いていました。

夕食

夕食の時間中は、皆一様に言葉数が少なくなり、黙々と食べ物を口に運んでいました。まるで死刑囚の最後の食事のようだと感じていた愛香。

その沈黙を破ったのは貴族探偵でした。“ガスコン荘事件”で面識のあった紗知に、どういう願い事をしたのかと尋ねたのです。

「大したものじゃないし、この場で言うのはちょっと…」とやんわり拒否した紗知。それに対して無理に聞くのも野暮だし、神を当てにする趣味もないと貴族探偵。

これはいづな様に縋ってきた人たちに対しては爆弾発言でした。何人かが渋い顔を見せます。その中の一人である田名部が「あなたの彼女もいづな様を信じているからこそ、ここに来たのでしょう」と抗議しました。

そんな抗議にも一切意に介せずといった様子の貴族探偵は、信心について否定するつもりはないが、私には必要ないだけと切り捨てます。

不穏な空気が流れますが、それが逆に雰囲気をガラリと変え、沈黙が続いていた食事に会話が生まれるようになりました。

金谷沢と田名部はサッカーの話題で盛り上がっていたようでしたが、やがて金谷沢の年配者特有のねちっこさが段々鬱陶しくなってきたようで、それを振り払うかのようにブンとと大きく揺らした髪に、金谷沢が箸でつまんでいた飴煮がひっついてしまいます。

慌ててパーマ頭に絡んだ飴煮を取りますが、ティッシュなどでは上手く取れないようでした。「いづな様の前なのに…」と明らかにテンションが下がった様子の田名部。それ以降ずっと不機嫌そうなままでした。

儀式

夜の8時半、女将によって床の間の火鉢に火が入れられます。儀式が始まりを告げたのです。

呪文のような言葉を女将が唱えると、飾ってあった熨斗袋を一つ一つ火にくべていきます。それを正座をしながら見つめる6人の面持ちは一様に真剣で、紗知さえも皆と同じく必死なように見えました。

滞りなく儀式を終えると、今晩泊まる部屋へと案内された6人。和美と田名部がそれぞれ一人部屋、香苗と紗知が相部屋、そして有戸と金谷沢も同様に相部屋という部屋割りでした。

「私は?」と女将に尋ねた愛香。どうやら儀式に参加しない彼女と貴族探偵は表館が今夜の寝床のよう。

次に入浴順について女将が説明します。湯船が一つしかないため、深夜の12時までが女湯で…

10:00 紗知
10:30 香苗
11:00 和美

12時以降は男湯に交代するのだとか…

12:00 田名部
12:30 有戸
01:00 金谷沢

最後に「それではみなさま幸せな一晩を」と女将が締め括り、奥館の思いドアを閉め鍵を掛けます。内側からは開錠出来ないため、閉じ込められた恰好になる6人のことをまるで生贄のようだなと愛香は感じていました。

有畑しずる

渡り廊下を通って表館へと向かっていた愛香。窓の外からは激しい雨音が響き渡っていました。

愛香は、どうしてあなたと良く一緒になるのかしらと貴族探偵に疑問を投げ掛けます。それに対し、私をストーカーでもしてるのかと答えた貴族探偵。

ひとしきり言い合った後、愛香は田名部優紀という人物に心当たりはないかと貴族探偵に問いかけます。さきほどようやく何が引っ掛かっていたのかを思い出したのです。

それに対し見覚えはないが逃亡犯か何かかねと答えた貴族探偵。法を犯した訳ではないが、ある意味そうだと愛香は答えました。

愛香が覚えていたのはネット上のあるトラブルのことでした。とある女子大生の個人ブログに「有畑しずるの24時」というサイトがあり、掲載されていた写真が美人だったことからかなり多くのファンがいたんだそう。

ところが4ヶ月ほど前から、“田名部優紀”という名前が時たま現れるようになり、どうやら2人は交際している様子だったのだとか。

そんな2人の関係が悪化したのは今から1ヶ月ほど前。相手の方が急速に冷めていったようで、田名部から浴びせられた罵詈雑言の数々がそこに載せられていたのです。

ある日、「もう死にたい…」との書き込みがあり、それが本当に最後の文章になりました。彼女は、電車に飛び込んで自殺をしてしまったのです。

その後、しずるの熱狂的なファンによって彼女を死へと追いやった“田名部優紀”という人間の身許調べが始まりました。

ブログの中に、田名部の実家近くの“山梨のイズモ”という場所についての書き込みがあったことから、山梨を中心に捜しまわっているらしいのです。

愛香が思っていたのは、もしかしてしずるは“浜梨”という言葉を“山梨”、“いづな”を“イズモ”と聞き違えたのではということでした。

つまりあの時感じた殺気は、ここ“浜梨のいづな”で田名部を待ち受けていたしずるのファンから発せられたものではないかと考えていたのです。

それを聞いていた貴族探偵は、君と出くわすと事件に巻き込まれるといったことを述べましたが、愛香としては紗知もいることだし冗談じゃないと思っていました。

しかし、その夜事件は起こってしまったのです。

事件概要

被害者:田名部優紀
第一発見者:女将(早朝6時)
場所:浴場内の小部屋(熱湯を加水して冷ますための場所)
死因:後頭部2か所の裂傷。撲殺によるものと思われる
凶器:ガラスの灰皿
死亡推定時刻:夜11時~1時までの間

孤立

第一発見者の女将が即座に貴族探偵へと伝え(事前に探偵であることを知っていた)、自ら動く気などなかった貴族探偵は愛香を叩き起こすようアドバイスしたのだとか。

早速現場に赴き、初動捜査を開始した愛香。脱衣所のロッカーや携帯電話(圏外のため通話などはない)などからは特に情報は得られませんでした。

女将が警察を呼びに行ったはずでしたが、どうやらトラブルがあったようです。豪雨のために外部への電話回線がダメになってしまったようで、今携帯電話が通じるエリアまで他の従業員が車を走らせているのだとか。

しかも別館から本館へと通じる道で土砂崩れが発生し、通行出来ない状態になっているということで、警察がここまで辿り着くのは当面の間不可能だと判明しました。

警察を待つつもりだった愛香でしたが、貴族探偵にもけしかけられ、この事件に挑むことに。果たして事件の真相とは一体…?!

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登場人物

<亀来島の滞在者>

具同 佳久(ぐどう よしひさ)
具同家当主政次の孫の一人。政次の三男の息子に当たる。お坊ちゃん風の育ちの良さがにじみ出た温和な雰囲気の男。

具同 弘基(ぐどう ひろき)
具同家当主政次の孫の一人。政次の次男の息子に当たる。大柄な体格で、ラテンのノリの軽い調子の男。

具同 真希(ぐどう まき)
具同家当主政次の孫の一人。政次の長男の娘に当たる。ふんわりとした雰囲気で、いかにも箱入り娘といった印象のお嬢様。

有岡 葉子(ありおか ようこ)
高身長で、美貌の持ち主。佳久のゼミの先輩にあたる。

玉村 依子(たまむら よりこ)
玉村家の令嬢。具同家の遠縁にあたる。愛香と会うのはこれで3度目になる。(第2話「色に出でにけり」で登場)

国見 奈和(くにみ なわ)
弘基の母親と奈和の母親が姉妹で、弘基とは従姉妹に当たる。佳久や真希とは直接血の繋がりはない。

平田(ひらた)
具同家の使用人。普段は本家で働いているが、別荘を使用するときだけ手伝いに来る。40前後の小柄で瘦せぎすな女性。

謎の依頼

高知県の西岸、宿毛の港から南西におよそ10数キロの海上に浮かぶ小さな島、亀来島。愛香はある依頼を受けてこの島へと向かっていました。

依頼人は不明。1ヶ月前、5月のこの日に島へ渡ることを条件に、通常の倍程の前金と依頼書が一通送られてきたのです。しかし、そこに記載されていた名前も住所も出鱈目で、どんな依頼であるのかも判別できません。

本来ならこういった怪しげな依頼を受けることはありませんでした。しかし、貴族探偵の出現以降、失敗続きで悪評が立ち、徐々に仕事を失っていた愛香にとってはこの依頼料ほど魅力的なものはありません。

評判が地に落ちる前になんとか名声を轟かせなければいけないと多少焦りがあった愛香は、何らかの罠である可能性を感じつつも、この依頼を引き受けることにしたのです。

クルーザーの同乗者

一体何者が自分を呼び寄せたのかと思いを巡らせながら、愛香は島へ向かうクルーザーに乗船していました。愛香の他の乗客は、20代前半の男女のみ。2人は海を臨みながらも、時折訝し気な顔を愛香に向けています。

“亀来島”はそもそも個人所有の無人島で、所有者は具同政次という元伯爵の老人。彼の先祖が戦争で勲功をあげた後、今でも重工業関係の重鎮として政財界に絶大な影響を及ぼしている存在なのだそう。

愛香がこの依頼を引き受けたのも具同家という確実な身許が判明したからこそでした。クルーザーの操縦士も愛香のことを聞き及んでいるようで、現時点で単なるいたずらとは考えられません。

当面は考えても仕方がないので、とりあえず同乗している男女を観察することにしました。

男の方はいかにも金持ちのボンボンといった感じでしたが、女の方は美人なのにもかかわらず着ているものに統一感がなく、ちぐはぐな様子。

親しい間柄ということは想像がつくものの、男が敬語で話していることからカップルのようには見えません。おそらく男の方が具同家の人間かなと見当をつけていると、「あなたも亀来島に?」と愛香に声を掛けてきます。

誰に誘われたのかと興味津々に見つめて来た男に、果たして何と答えていいのやらと躊躇っていると、「まさか弘基ですか?」と男の方が勝手に話を続けました。

一応具同家について下調べをしてきた愛香は、弘基というのが政次の孫であることが分かっていました。ここで嘘をついて後でバレたら面倒だと思い、適当に濁していると女の方が助け船を出してくれました。

「人にものを聞くのなら、まずは名乗りなさい」とまるで姉のように男をりつけた様子の女。男が「先輩」と女を呼びながら愛香に詫びると、自らの名を具同佳久だと名乗りました。

佳久は政次の孫の一人で、弘基とは従兄弟同士にあたると即座に判断した愛香。女の方は有岡葉子という名だと判明します。

今回この島を訪れるのは佳久、弘基、真希(いずれも政次の孫)の3人だけだというので、さては真希の友達ですかと尚も知りたがっていたので、島に着いたら教えますとはぐらかした愛香。

これ以上追求されても困ると思った愛香は、亀来島がウミガメの産卵場所として有名であることを知っていたので、その話題を振ってお茶を濁すことにしました。

意外な出会い

クルーザーが島に到着した時、桟橋には40代前後の小柄な女性がすでに待っていました。服装から見るにどうやら使用人のようです。

「やあ、平田さん」と佳久が声を掛けると、「いらっしゃいませ、佳久様」と平田。続いて愛香にも名指しで声を掛けて来たので、クルーザーの操縦士も自分の名前を知っていたようだし、やはり話は通っていると多少安心した気持ちになりました。

すると平田が、すでに真希様たちが別荘でお待ちですと愛香に伝えて来たので、どうやら自分の依頼主が真希だったのだとはっきりしたのですが、他の人たちにも隠していないその様子がどうも腑に落ちません。

疑念が愛香の頭の中で渦巻いている中、ふと見上げるとある女性の姿が目に入り、彼女の抱いていた全ての疑問が氷解していきました。

そこにいたのは、なんと玉村依子だったのです。一体どういうつもりなのかと思わず声を荒げてしまった愛香。

対する依子は「お久しぶりね」と平然とした態度でした。彼女と会うはこれで三度目で、前回会ったのは玉村家で事件が起きたのは今から10ヶ月近く前のこと。

「依頼は?」と尋ねると、視線を斜め上に逸らし、肩をすぼめるだけの依子。しばらく待っても何の釈明も出てきません。

仕方なく具同家との関係について愛香が尋ねると、なんでも遠縁にあたるらしく、真希とも幼馴染なのだそう。

そしてあなたに会わせたい人がいると依子。この前の中妻という彼氏かと尋ねましたがどうやら違うようです。

貴族探偵登場

別荘へと向かった愛香たち。近くに来るまで判別がつきませんでしたが、別荘は2棟に分かれており、手前が母屋、奥の3階建ての建物が別棟のよう。

玄関に入ると、待っていたかのように中から小柄で色白の女性が飛び出してきました。愛香と同い年くらいで、全体的に軽やかな印象の女性です。

その女性は具同真希だと名乗り、愛香も自己紹介しました。どういうお仕事をされているのかと尋ねてきたので、どうやら愛香が探偵であるとは知らないようでした。

立ち話もなんだからとリビングの方へと一行が移動すると、「おや、これまた奇遇な」と聞き覚えのある声が愛香の耳に入ってきます。

その声の主は愛香が一番会いたくないと思っていた相手、貴族探偵でした。

なぜあなたがここにいるのと愛香。対して貴族探偵はいつも通り、それはこっちのセリフだとうんざりした表情で返します。

貴族探偵はウミガメの産卵を見るために依子に引っ付いてきたのだとか。過去の因縁もあり、しばらく言い争う2人。

するとそこへ佳久と葉子が現れます。別荘への道中で見失っていたため、寄り道でもしていたのだろうかと考えていると、お部屋にご案内しますと平田が愛香と葉子に声を掛けてきました。

愛香たちの部屋は別棟の2階のようで、母屋と1階でつながっている通路を歩いていく一行。

2階に上がって階段のすぐ脇が真希の部屋、そこから数えて2番目が依子、3番目が愛香、4番目は後で弘基が連れてくる国見奈和という女性の部屋で、階段から一番遠い5番目が葉子の部屋という割り振りになっていました。

別棟は基本的に来客用で、具同家の人間は母屋に泊まることが多いのだそうですが、今回真希だけは友人の依子と一緒ということでこちらに泊まるのだとか。

ちなみに貴族探偵はというと、彼は特別待遇のようで母屋の1部屋を用意されているようで、愛香にとっては彼が具同家と同じか格上なのかもしれないと思うとうんざりするばかりでした。

来訪者

夕方、弘基と国見奈和がクルーザーで到着しました。アロハシャツに短パンという格好の弘基は、どちらかというとラテンの軽いノリといった感じの男で、連れの奈和は弘基とは従姉妹同士の関係なのだとか。

弘基の母親と奈和の母親が姉妹で、具同家とは直接な血縁関係はないものの、親族であることには変わりなく、奈和の父親は具同の所有する系列会社の役員をしているよう。

葉子とも初対面の様子で弘基と挨拶を交わしていました。しばらくするると、話が貴族探偵のことに移っていきます。

奈和が「あの方が貴族探偵なのでしょ?」と話を振ってきたのです。「ご存じなんですか?」と愛香が尋ねると、いつも事件を素早く解決することで有名だと奈和。

そこへ真希も目を輝かせながら話の輪に加わってきます。一部の人には人気があるのだなと愛香が思っていると、あの方の捜査する姿を見たことがあるのかと真希から尋ねられました。

何度かあると答えると、羨ましいわと真希。その傍らでは奈和が、そのうち妬みに変わってしまうのではと怖くなるほどの羨望の眼差しを送ってきているのに愛香は気付いていました。

テニス

翌日の午後、愛香はラケットを手にテニスコートにいました。後衛には弘基、対戦相手は貴族探偵と奈和。

そもそもの発端は、弘基が愛香を口説いてきたことでした。依子は貴族探偵の恋人だし、真希と奈和は従姉妹、葉子と佳久は一見カップルのように見えるため、どうやら残り物の愛香に狙いを定めたよう。

適当に受け流していた愛香でしたが、貴族探偵が「彼女は私の所有物だから」と割って入ったことで事態は混乱したのです。

紆余曲折を経てテニスで決着をつけようということになり、なぜか男女混合ダブルスをする羽目になったというのが事の経緯でした。

テニスの経験などほとんどない愛香の一方で、貴族探偵はなかなかの腕前を披露します。案の定、貴族探偵・奈和組が大差をつけてリードした所で、突然雨が降り出し試合は中止となりました。

轢き逃げ

夕食の席で葉子が「雨で思い出したんだけど」と皆に切り出しました。昼のテニスの時は、佳久と葉子は海岸を散歩していたらしく、突然降り出した雨で濡れ鼠になって別荘へと戻ってきていたのです。

彼女が思い出したことというのは2年前のこと。なんでも、ひき逃げを目撃したのだとか。

今日と同じような5月の雨の日。大学へ向かっていた葉子の脇を傘を差した自転車が横切っていったのだそう。

次の瞬間、その傘が風に煽られて飛んで行き、その子が立ち止まってしまったようで、そこに明らかにスピード超過の車が飛び込んできたのです。

その車は白いスポーツカーで、窓から首を出して確認した後、慌てて逃げていったのだそう。その後通報したものの、雨も強かった上に気が動転していてナンバーも確認できなかったのですが、つい先ほど雨に打たれたことではっきりと思い出したと葉子は言いました。

葉子は、被害者が母子家庭で事故現場に花を供えている姿に出くわすことも多く、何か力になれればと思っていたので、これで事件が解決するかもと嬉しそうな様子でした。

事件発生

翌朝、愛香は激しいノックの音で目を覚ましました。何でも強く叩かれるその様子に尋常ではないものを感じ取って愛香は飛び起きて、慌ててドアを開けます。

そこに立っていたのは依子でした。「平田さんが!」と青ざめながら話す依子の様子に切迫感を感じ取った愛香は急いで彼女の部屋へと向かいました。

平田の部屋は母屋の1階の一番端。愛香が到着するとすでに戸口に3人(弘基、佳久、真希)の姿が見えます。

部屋に入ると、愛香が危惧した通り平田の死体が横たわっていました。実は探偵であるということを皆に説明する依子。

愛香は、とりあえず依子に警察へ通報するよう頼みます。その後現場検証を開始しました。

現場検証1

被害者:平田
現場:平田の自室のベッドと流し台の間
死因:背後からの絞殺
凶器:ビニール製の細いロープ(母屋の物置にあったもの)
死亡推定時刻:深夜1時~2時頃

キッチンを見ると、流し台の上にティーカップが一つ転がっていました。コンロには水の入ったケトルが載っています。

おそらく平田が寝ていた所に犯人がやってきて、彼女がお茶を淹れてもてなそうと湯を沸かしていた時に背後から絞殺したのだろうと愛香は睨みました。

そこへちょうど通報を終えた依子が戻って来たので、遺体を見つけた経緯について訊ねました。

依子は朝になっても平田が起きてこないことを不審に思い、真希を連れて起こしに行ったのだそう。

するとそこへ貴族探偵が遅まきながらやって来ます。愛香が「今日は手持ちの探偵がいないようだけどどうするの?」と問いかけると、「私が探偵で、彼らは使用人に過ぎない」と貴族探偵。

その時、警察から依子へ折り返し連絡が入ります。どうやら海が荒れていてすぐには来られないのだとか。

その後、絶海の孤島に閉じ込められた形となってしまった愛香たちに再び魔の手が襲い掛かります。果たしてこの中に犯人はいるのか…だとしたら一体誰が…?!

『貴族探偵対女探偵』原作小説 第5話「なほあまりある」のネタバレと感想はこちら

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